諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


最初に言ったのは、昇哉ではないか。

何故そんなことを言うのかと文句を言いたくなった。

「はいはい、分かりました。やりますよ。待っててね」

 とくるみさんは言って居間に行き、戸を閉めて何かをし始めた。

 中年集団と昇哉は、カバンからカメラを出して、スタンバイしていた。

 すると、くるみさんが戸を開けて

「お待たせ―」

 と言い中年集団と昇哉に手を振っていた。

 くるみさんはさっきの格好とは違い、水着を着ていた。

ゴムを結んでいた長い髪はおろされていた。

 彼女の体型に目を奪われた。

 鎖骨、長い脚、長い手、整えられた顔。

また、大きい黒目で二重。

 八頭身もあるかと思われる体型を中年集団と昇哉は、カメラを握りしめて真剣な眼差しで彼女を撮っていた。

 その光景を見ると、ちょっと気持ち悪い。

 昇哉は真面目な雰囲気とはガラリと印象が変わり、いいね、はい―こっちと明るい声で彼女に言っていた。

 また、後ろにいた昇哉は中年集団を横切り、前を陣取っていた。

 中年集団は、なんだよ、俺が前だと言わんばかりに前でパシャパシャとカメラのシャッタ―を切っていた。

「いいね」

 中年集団と昇哉は声を揃えて、我を忘れるくらいに夢中になっていた。

彼女の写真を良いものにしようと必死なのだと感じられた。