「あなた」
「はい?」
「この店の仕組み、分かってる?」
「あ、それならさっき松岡さんに会計とか本の整理とか客の対応をすれば大丈夫と言われました」
「そういうことじゃないの」
くるみさんがそう言った時、大きい胸が揺れたのは女の私でも見逃さなかった。
「え―と、なんですか」
「あなた何も言われてないの。じゃあ、私が説明しなきゃ分からないか。あなた夢ある?」
諦めたように彼女はため息をつき、私に聞いてきた。
「……え―と、なんでそんなこと聞くんですか?」
「はあ、本当に何も聞かされてないのね。私が、あなたごときで心配することなかったかも。この店は、夢を提供してくれる所なんだよ」
「夢を提供してくれる所?」
「そう。ここは、従業員の夢をお客様が提供してくれるところなの。だから私達は、夢を持っている人しか雇われないんだよ」
従業員の夢をお客様が提供してくれる。

