諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


女性は胸が見えそうな赤いワンピースを着ていて、綺麗な黒い長髪をしていた。

左手に持っていたカバンが全開に開いていたので、私は優しい方なのかもと推測した。

私の経験上、カバンを開いてる人は、優しい人が多い。

女性は立ち止まり、カツンカツンとヒールの音がする中、私の方へ近づいてきた。

「あなた、ここで働いている人?」

「あ、はい。そうです」

「あ―、陽和が言っていた。アルバイトの人ね。はいはい」

 女性は私の全身を見つつ、自分の顎を右手に当て私を見てきた。

「え? はい?」

「……ふーん。陽和もこんな人をアルバイトにしたんだ。ふーん」

 顎を右手に当てて、女性は私をずっと見てきた。