諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます

 私はまた下に俯き落胆していた。

「……昔の話? 才能なんて誰が決めんだよ。公募受からなかったのか残念だ? でもな、文章能力とかそんなもん別にどうでもいいと思うぜ。相手に何を伝えたいか。陽琉自信、その本になんのメッセージを伝えたいかを伝えればいいだろう。この古本屋だって、誰かに想いを伝わって、心に残ればという思いで本として売ってるんだ。だから、陽琉の思うことを書けばいいと思うよ」

煙草を吸い終わったのか彼は立ち上がって、会計スペ―スから灰皿を持ってきた。

灰皿に煙草をぐしゃぐしゃにして私に思いがけない一言を放った。

「……じゃあ、この古本屋でアルバイトしてみるか?」

 下を俯いていた私は、顔を上げて松岡さんを見た。

「……いやいや。なぜ私にアルバイトを頼むのですか?」

「なんとなく、陽琉、面白そうだし」

「面白いからって……私まだ就活しなくちゃいけないですし、やらなければならないことあるんです」

「例えば?」