諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


昔のこと。

昔のことのはずなのに、何でだろう。夢って聞かれると、素直に答えたくなる自分がいる。

「……夢ですか……夢は小説家」
 
松岡さんは黙って聞いてくれた。

「へぇ―、小説家。なんで小説家になりたいの?」

息を吐いてから煙草を吸って、私の夢なんかを聞いてくれた。

「……昔、趣味で小説を書いていたんです。それで、友達に小説を見せたら、面白いと反響があって調子に乗って、公募を受けたんです。でも、結局ダメだった。私は、元々そんな文章能力もないし、相手に伝わるような才能持ってなかったんです。小説家という夢は昔の話ですから」