それでも、分からなかった。
「……行きたくなかったのか、陽琉は」
「……いや、そういう訳ではないです。でも、自分が何をしたかったのかよく分からないです」
松岡さんは息を吐き捨ててから、私にこう言った。
「陽琉は、夢はあるか?」
夢。
夢か、昔はあったな。
ケ―キ屋さん、自分で言うのは恥ずかしいけど芸能人にもなりたかった。
……小説家。誰にも言えてないけど、人生の中で一番夢を叶えたいと思えた職業。
小説家なんてなれるはずもなく、公募を受けるも落選を繰り返していた。
当たり前だ。主人公の苦悩や葛藤が伝わってこないからだ。
この時から親や友達の目を気にして、自分の夢を言わなくなった。

