諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


すると彼は急いでお茶を持ってきてくれたようだ。

腰を低くおろしながらテーブルにコトンとお茶を置いて彼は言った。

「……え―と陽琉さんは、就活生ですよね?」

「はい。そうです」

「なぜあんなところに行ったんですか?」

 ……言える訳がない。

面接に遅刻して、不合格したことを。

「……」

彼は、コップを握りしめながら私を見て言った。

「……俺には言えませんか?」

「……」

彼は私の目を逸らさずに見てきた。

なんと優しい目をしているのだろうか。

その目に奪われた。

「……じゃあ俺が当ててあげましょうか?」

彼はそのまま私の目を見ていて、この人には私のことがお見通しのように思えた。

「……」

「……俺の推測では、就活で失敗した?」

「……正解です」