「……ああ、じゃあな。元気でな」
松岡さんはそれだけ言い、奥の部屋に行った。
林総理大臣は外へ出て行き、私は慌てて外に出て声をかけた。
「林総理大臣」
「……あなたの言う通りでした。本当に私、陽和のことをちゃんと見ていなかったんだ。私が勝手だったんだな。あなたには色々教えてもらいましたよ。ありがとう」
「……そんな。私はただ松岡さんの気持ちを分かってほしかったんです。まさかそんな別れ方をするなんて……」
「いいんですよ。むしろ、陽和が私に会ってくれるだけで奇跡なんですから」
林総理大臣は、ニコっと笑顔で答えた。
その顔はまるで松岡さんに似ていた。
「……これでいいんですか?」
「はい、私と陽和で決めたことですから。そろそろ行かないと……」
高身長のSPの男性と秘書の女性が林総理大臣、早くして下さいと言っていた。
林総理大臣はそれに応えて、ああと言い、車に乗り込んだ。
その時、慌てて松岡さんが出てきた。
林総理大臣はそれに気づき、また車から外に出て彼の元へ行った。

