「……私はあの時、あのようにしたのは理由があるんだ。
ストレスが溜まっていたのかもしれない。私はあの時のことを覚えていないんだ。全く以って。
母さんにもそのことを言ったよ。
母さんは冷静だったよ、本当に。
そしたら、病院に行こうって言われてね。病院に行ったら、解離性同一性障害と言われたよ。今は、病状も安定している」
「……」
彼は黙って、林総理大臣を見ていた。
私は松岡さんを見て、顔色ひとつ変えなかったので驚いた。
「なんか言ってくれないか? 陽和。私が困るじゃないか?」
「……解離性同一性障害ってことは、本当の親父じゃなかったってこと」
彼は瞬きをしないで、林総理大臣に一点を集中させいた。
「ああ、そうだよ」

