「ひよ―っぢ」
コバさんは松岡さんの名前を呼び、涙を流しながら彼の胸に抱きついていた。
彼は、コバさんをよしよしと子どものようにあやしていた。
くるみさんも涙を流していた。
その状況に夢を叶えるということは、難しいことなのだと痛感した。
この古本屋『松岡』が出来てから、五年。
夢を叶えるために、自分で努力して、バイトもして、どういうふうに夢を叶えられるのか考えてきたのだろう。
それなのに私は何をしているのだろうか。
就活を終えて、仕事は決まった。
好きな仕事が決まったはずなのに、なんで夢が叶った気がしないんだ。
私の叶えたい夢は、仕事をしながら小説家になることだ。

