「陽和、そんな泣かなくても……でもね、私の目標はモデル事務所に入ることだから。読者モデルになったからといて、油断は出来ないからね。気を引き締めていかないと」
目に涙を浮かべながら彼女は松岡さんに言った。私達は松岡さんとくるみさんの様子を見ていた。
「……そうだな。目的だけは失わない方がいいな。でもくるみいつの間に受けてたの?」
彼は涙を流しつつも、言葉ははっきりと答えていた。
「今年に入ってから……ひとりの力でやってみようと思って……」
彼女は私と同じく自分の力で試してみたかったのだ。
中年集団と昇哉さんの力を借りるのではなく、自分の力で。
「くるみ、良かったな。おめでとう」
右手に酒を持ちながらコバさんは、ニコッと笑顔を浮かべていた。
だが、その笑顔には輝きが見えなく、目が喜んでいないように感じられた。
「くるみさん、良かったですね。私にも見せて下さい」
「いいわよ、陽和。もういい?」
「ああ、いいぞ。陽琉、見な! 雑誌にくるみがいるぞ」
松岡さんは史上最高の笑顔で私に微笑んできた。

