「なんでだよ! あ――戻るぞ!」
乱れている髪をまたグチャグチャにして、彼は地面を蹴り飛ばしていた。
「え? ちょっと待ってください」
コバさんが急に走って行くので私は慌てた。
「早く行ってるぞ―!」
「え? ちょっと待って―!」
私は彼が急いで行くので、私より足が速いコバさんの速さにはついていけなかった。
待ってよ―!
私はコバさんに一生懸命ついていき、古本屋『松岡』に着いた。
ガラっとドアを開けた。
「ひよっち、なんでだよ!」
開けると、コバさんが怒鳴り声を上げていた。
松岡さんは両手で腕を組み、黙って椅子に座っていた。

