諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


声の主は顔や服が汚くなっていて、もう泥まみれだ。

子どもみたいに手も足も汚れていた。

「……やっと見つけた!」

 声の主は、嬉しそうにピヨを抱き上げていた。

「……はあ、もう探したんだぞ」

ピヨに顔を近づけて、声の主はよしよししていた。

「ありがとうございます。本当に助かりました」

「いえいえ、此方こそ」

 声の主は、本当にありがとうございますと頭を下げた。

「…あの名前は?」

「…小松陽琉(こまつはる)です」

「さっきは、ありがとうございます。俺は、松岡陽和(まつおかひより)です」

「ネコ見つかって、良かったですね」

 私は、ネコの話の話題に変えた。

「はい。本当にありがとうございます。あ、そうだ。お礼に俺の家に来ませんか?」

「いや、ただ私はネコを探しただけですから」

 松岡陽和という男は、私に強い眼差しを向けてきた。