諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


まあ、そうよねと彼女はビスケットの袋を近くにあったゴミ箱に捨てた。

「陽和は総理大臣の息子だけど、養子なの。総理大臣の母親は、子どもがひとりも産まれなかったんだよ。それで、なんとしてでも子どもがほしかった総理大臣は、児童養護施設である兄弟を見つけたんだ」

「兄弟?」

「そうだよ。陽和以外に弟がいるんだ。でも兄弟で総理大臣の家に住むことになったんだけど、環境の変化が激しくてね。私が知っているのはここまでだけど。確実に言えるのは、ネコが原因で追い出されたって聞いたけど。後は、私は知らない」

 そう言った後、くるみさんは一瞬悲しい顔をしていた。

「そうですか……か。今日の田中さんといい、つてがあると松岡さん言ってましたけどあれは林総理大臣の息子だからですか?」

 あ―そこよねと彼女はそう言って、ニコリと笑顔で答えた。

「……そこは後々わかるよ。総理大臣の息子だからっていうわけじゃないと思うけど」