諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


「……でも、何でですかね?」

「何が?」

「あの松岡さんだから、期待したんですけどねってどういうことですか?」

 私はくるみさんに聞いた。

 小さい顔がすごい引きつった顔つきになっていた。

 聞かない方がいいことだったのか。

 でも聞かないと分からないことだってある。

 私だけ分からないのは違うのではないか。

「……あ―あれか。そんなこと言ってたの。ふ―ん、その件については知ってた方がいいかもね」

 右手に抱えていたビスケットの袋を持ち、ビスケットをパクっと口に入れてから、私を見て言った。

「陽和はね。林総理大臣の息子なの」

 えー! あの林総理大臣の息子! 

あの人が? 私は目を泳がせた。

「無理もないわよね。陽和はその事については言わないからね。陽和はね、あの林総理大臣の息子だけど、色々事情があってねえ」

 くるみさんは、これ言って大丈夫かな? と首を回してちらっと私を見た。

「教えて下さい。私だけ知らないのは嫌です」