諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


「分かった」

その眼は、私を見透かしているような目をしていた。

「今日は、ありがとうございます」

 私は田中さんに礼をした。

 彼は私なんかに律儀に礼をしてくれた。  

彼はれんかちゃんの耳元で何かを言っていた。

田中さんに言われたのかお姉ちゃん、バイバイとれんかちゃんは言って、彼に手を握られて親子で微笑みながら帰っていた。

 私は外まで行き、自電車に乗っている親子の背中を見送り、古本屋『松岡』に戻った。

「はあ」

 私はひとりため息をついた。

「ダメだったか」

 居間に行って以降、出てこないと思ったら、彼女はお菓子を食べていたのか。

 くるみさんはポリポリとビスケットを口に頬張り私に話しかけてきた。

「そうですね、ダメでした」

「まあ、次あるでしょ」

 落ち込む私にくるみさんは、大丈夫、大丈夫とねぎらいの言葉をかけてくれた。