「何がダメだったでしょうか?」
私の言葉で彼は黒目だけ私の方を見てから、原稿用紙を文字一つひとつ丁寧に読んでいた。
「う―んと、内容は本当にいい。あまり、バス運転手っていうのは小説で書いたことないからね。その点についてはいいね。う―ん、なんだろう。なんかが足りないんだよ」
田中さんは、どうしたらいいのねと言ったら、ヒーローが登場するかのようにドアが開いた。
それを見ると、くるみさんだった。
私は彼女を見ていたら目が合った。
私は首だけお辞儀をした。
くるみさんは、私を無視して田中さんの元へ行ったのだ。
私はその行為に少し傷ついた。
「こんにちは」
くるみさんは、営業スマイルの笑顔で挨拶をした。
「あ、こんにちは。あなたはここの店員?」
「そうです。ゆっくりしていって下さい。子どもさんですか? かわいいですね」
原稿用紙から目を離して、田中さんはれんかちゃんを見て口角が上がっていた。

