諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます


下に俯いたら何度も面接に行っているせいかヒ―ルが汚くなっていた。

 下なんて見てなかった。

下なんて見る暇なんてなかった。

でも、こんな汚いヒールを履いていたら、受かるはずもない。

 私はA会社を出た。

 雲はひとつもなく、私の気持ちなんて関係なく外は晴れていた。

 真っ直ぐに家に帰りたくなかった。

帰ったって、母親が無理に笑った表情や静かな家にある変な空気。

見えない表情や空気は、私にとっては辛い。
 近くにあるバス停に乗らないで、行くあてもないのに、ブラブラと歩いた。


誰もいなく、広いところに行きたくて、ひたすら歩いて探していた。