「おはよう」 「おはよ紫苑!始業式から遅刻なんて紫苑らしくないぞー?」 「……あは、寝坊しちゃった!」 明るく笑いかける莉子に、これまた明るく返事をする。 莉子のことは好きだ。 狭い世界の中で生きていたあたしを外へ連れ出してくれた。 そんな莉子に嫌われないように、少しでも“普通の人”になれるように、あたしは何年も下手くそな笑顔を貼り付けていた。