シュタンッ、シュタンッと、畳を手で叩く音がした。

それに伴って、幾枚もの歌留多札が宙を舞う。

『恋す………』

読み手が上の句を呼んだ瞬間、また、札は弾かれた。

彼女は、零華。
百人一首歌留多がとても得意な中学生だ。

彼女の手には、先程取った『人知れずこそ 思ひそめしか』という下の句が平仮名で書かれてあった。

「私、得意札は誰にも渡さないわ。」

札を前々に取った札の束の上にそっと置く。
そして、落ち着いた顔をして、耳を澄ませる。