ひらひら。
 ひらひら。
俺の目の前に落ちていく、ピンク色の桜の花びら。
「乙偉ー?」
 トン、と誰かが俺の肩に手を置いた。
「・・・凌」
「やっぱり乙偉だ。入学おめでとー」
 やっぱ俺って天才、とかなんとか言っている凌は放置。
「クラス見てないな・・・」
「マジー?じゃあ一緒に見てこうぜ」
「んー」
 スッと歩き出した凌に並ぼうとした。
 が。
「・・・っ」
 桜の木の下。
 栗色のセミロングの髪をなびかせる少女。
 そよ風に揺られるスカートを少し押さえながら、不意に俺の方を向いた。
「・・・っっ!!」
 一瞬だけ。一瞬だけ、目が合った。少し驚いたような顔をして、ふっと笑った。
「・・・い?乙偉?おーい、乙偉!」
「へ?」
 パシン、と。
 凌が俺の頬を叩いた。
「いってぇ・・・!」
「返事くらいしてよー、もー」
「っ、叩くな!」
 ははっと朗らかに笑う凌。
「あ、そうだ。俺と乙偉、同じクラスだよ」
「え、マジ?」
 俺は1年間、凌の子守りか。
「・・・」
「え、なに」
「乙偉、今子守りがどうとか考えたでしょ」
「おー、よくわかったな」
「ひどいよー!!」
 本当に悲しそうな顔をする凌に、クスッと笑ってしまう。
「早く武道場行こうぜ。遅れたら面倒」
「マジか」
 言うなり、走り出した凌。
「ちょ、待てよ!」
 俺も、遅れて走り出す。