「だよね。昔と大違いだからね」

光一郎の話では、彼もル・レッド出身だと言う。
中等部二年へ飛び級した光一郎と入れ替わるように小鳥が小学部に入学したらしい。そして、その頃の光一郎はもっと童顔だったようだ。

「でね、僕は六歳の女の子に一目惚れをしたんだ。それが過去の君」

ハァと小鳥は気の抜けたような返事をする。

「で、現在。お掃除お姉さんとして懸命に働く姿を見て惚れ直した」
「なかなか興味深いお話ですが、どこに惚れ要素があるのでしょう?」

ただ単に仕事を全うしているだけなのに……と小鳥は首を傾げる。

「桜木三日月の娘なのに、天才なのに、便器に顔を突っ込み掃除する姿はプレミアものの素敵さだと思うよ」

おや? と小鳥は思う。

「ご存知でしたの? 三日月が父だということを」
「当たり前だろ、婚約者なのだから」

それもそうか、と小鳥は頷く。

「ということは、もしかしたら、作家ではなく私を観察するためにスイートルームに滞在されていたのかしら?」

光一郎は含み笑いをすると小鳥の頬に手を添える。

「君の推理力は抜群だね。そう、作家じゃない。でも、観察じゃなく一刻も早く婚約者殿に会いたかったから」

フェロモン剝き出しの光一郎に、全く動じない小鳥。

「あっ、それと自分の仕事を全うするため?」

疑問符を付けるのは何故? 奇想天外摩訶不思議星人は父以外にもいるのだな、と小鳥は自分のことを棚に上げ思う。