ドストライクの男


パーティー会場はグランドステイKOGO嘉門の間。二千名収容できる大広間だ。

七時から始まったパーティーは、たった一時間過ぎただけなのに、大いに盛り上がっていた。

ポップな曲に合わせ体を揺らす者、豪華な食事に舌鼓を打つ者、真面目な顔で経営問題を話し合う者。人また人の会場で、本来、オタクな小鳥は酔いそうになっていた。

「へー、可愛いおバカちゃん、君も来たんだね」

壁を背にボンヤリしていた小鳥の頭上に甘いテノールの声が降り注ぐ。
突然掛けられた声に、ギクリとし、恐る恐る見上げる。

そこに5101号室の王子、光一郎の顔があった。
彼は光沢のあるグレーのパーティー用スーツを着込み、唇の端をちょっと上げ小鳥を見下ろしていた。

「綺麗な格好で壁の花とは勿体無い。見違えたよ」

その姿は本物の王子のようだった。だから小鳥は無意識に言ってしまった。

「こんばんは。王子様」

光一郎は笑いを堪え、それに合わせる。

「こんばんは、姫。本当に綺麗だ」

光一郎の熱っぽい瞳が小鳥をジッと見つめる。
父三日月を筆頭に、多くのイケメンや、ル・レッドでは本物の王子を目にしてきた小鳥だが、今、生まれて初めてドグンと胸が音を立てた。

二人の瞳が重なり、お互い躊躇いがちに微笑み合う。

「何か飲む? あっ、君」

光一郎は飲み物が乗ったトレーを片手に持つボーイを呼び止める。

「じゃあノンアルコールのブラッドオレンジをお願いします」
「場慣れしているね」

光一郎がニヤリと笑う。

あっ、お掃除お姉さんっぽくなかった?