ドストライクの男


だが、いくら天才と言っても恋愛経験のない小鳥に妙案など思い浮かぶわけもなく、一日が経ち、二日が経ち、三日が経ち、気付けば年の瀬、三十一日になっていた。

「浮かない顔しているわね」

冬期休暇中ということもあり、オフィス階はひっそりとしていた。
誰もいない筈の廊下を、搭乗式洗浄機でピカピカに磨いていた小鳥はビクッとアクセルから足を離す。

「ベリ子さん、どうしたのですか?」

B.C. Building Inc.も、8Fビルメンテナンス部以外冬期休暇に入っている。

「この格好、見て分からない?」

ベリ子は目も覚めるようなイエローカラーのミニ丈ワンピースに、「とっておき!」と常々言っているルブタンの靴を履き、その足を軽く前に出しポーズを取る。

少し考え、小鳥は「あぁ」と軽く頷く。

「もしかしたら『年の瀬チャリティー・カウントダウンパーティー』ですか」
「ピーンポーン。大正解!」

毎年開催されるパーティーだが、新ビルになってから、招待者以外、B.C. square TOKYOで従事する者なら誰でも参加OKとなった。

そう言えば、と思い出す。
十二月に入ってから話題の中心はこのパーティー一色だった。

チケット代は二万円、とべリ子たちからすればかなり高額だが、昨年も老若男女かなりの人数が参加し、巷ではプレミアもののパーティーと噂されるほどだ。

何故プレミアなのか? それは、普段お近付きになれない、年収1,000万円以上のミドルフロアの住人は勿論、4,000万円以上のアッパーフロアの住人、その他、4Fクリニックフロアの住人など、華麗な面々が参加するからだ。