「できればパパとママみたいに恋愛結婚して欲しいけど、万が一、二十歳までに相手が見つからなかったら、パパの決めた男性と一緒になってね」
ちょっと待った! 今、十二月。誕生日は六月。だから、二十歳と言ったら、後半年ほどしかない、と小鳥は壁に掛かる来年のカレンダーを見る。
「パパ、どうして期限付きなのかしら?」
フツフツと沸き上がる苛立ちを押し込め、横暴な提案理由を一応、問うことにした小鳥に、三日月は邪気のない笑みを浮かべる。
「だって、成人しちゃうでしょう。そしたら子供じゃなくなるじゃない」
法律上確かにその通りだが……。
「でも、私がパパの子供であることには変わらないのでは」
「当たり前じゃない。パパの子じゃなかったら、田中の子だって言いたいの!」
三日月は自分で言って自分の言葉に憤慨する。
「だったら、別に期限を区切らなくてもいいのでは?」
「それは駄目なの。パパにも事情ってものがあるの」
可愛い子振りながら、ちょっと困った顔をする。
この際、パパの事情はどうでもいい! と小鳥はその顔にイラッとしながら、結婚するのは私でしょう? と腑に落ちない思いでいっぱいになる。
「とにかく、ドストライクの男を自力で見つけるも良し、パパの見つけた人でも良し。あっ、何なら、さっきデートに誘ったバリスタでもいいわよ。結婚しましょうね」
結婚大前提の会話だが、全くその気のない小鳥は、どうしたものか、と改めて考え始める。


