「ところで小鳥ちゃん」

ん? と小鳥は三日月を見、ギョッとする。
今度は何だ! 美し過ぎる策士顔。この顔に何度悩まされただろう。
嫌な予感がする、とソッと小鳥は溜息を付く。

案の定……。

「好きな人はできた?」

飛び出た言葉は、やっぱりハーッと溜息を付きたいものだった。

突然何だ! 意図が分からず下手に答えられない……というよりも答えたが最後、四方八方から意味不明の意見に埋め尽くされ、がんじがらめになってしまうのを、小鳥は経験上知っていた。

だから答えたくない、と押し黙る。

「パパね、小鳥ちゃんに幸せになってもらいたいの。本当は嫌だけど、そろそろ結婚とかどう?」

ほら始まった。仕方なく小鳥は冷静に答える。

「どうと言われても、私はまだ十九歳です。早過ぎます」

だが、敵もさるもの引っ掻くもの。

「あらっ、ママがパパと結婚したのは十八の時よ。あぁ、思い出すわ。可憐なママのウエディング姿。パパは小鳥ちゃんのウエディング姿が見たいの! だから……」

嫌な予感は大当たりだ。
『だから』に続く言葉は聞きたくない、と小鳥は耳を塞ぎそうになる。

「だからね、ドストライクの男を探しましょう」

ハァ? 何、そのドストライクの男って?
キョトンとする小鳥を横目に、三日月はフフンと鼻を鳴らす。

「ストライクゾーンなんて悠長に幅広く探さないで、バチッとド真ん中、ドストライクの男を見つけるのよ!」

訳が分からない、と小鳥はフルフルと首を左右に振り、父は天才を悩ます天才だ、と盛大な溜息を漏らす。