意味深に答える光一郎に、ベリ子の妄想が止まらない。

「やだぁ、裸って……小鳥ちゃん、やるぅ。あっ、私、小鳥ちゃんの友達でベリ子と言います」

「僕は黒羽光一郎。スイートルームに在住しているが、王子じゃないよ」

「細かいことは、いいのいいの。で、黒羽様はお幾つ? 独身……ですよね。彼女とかいらっしゃるんですか」

何がいいのか分からないが、ベリ子のイイ男リサーチは止まらない。

光一郎は「おっ、美味しそうだな」と小鳥のプレートに手を伸ばしポテトフライをつまみ、モグモグと口を動かしながら「僕? 二十四歳。独身。彼女は……」と小鳥の方を意図有り気に見る。

ベリ子はニヤリと笑い「へー、そうなんですね」と言いながら悪代官並みに厭らしく瞳を輝かす。

小鳥は光一郎の熱い視線を受け、もっと食べたいのかな? と勝手な解釈をし、これ幸いとプレートを光一郎の前に置く。

「どうぞ遠慮なく召し上がって下さい。この量に降参していたところです」

トンチンカンの小鳥の反応をものともせず、光一郎が応答する。

「君からのファーストプレゼント、有り難く頂くよ」
「いやーん、甘~い。恋人同士の語らいみたい。私、お邪魔かしら?」

ベリ子は二人に生暖かい目を向け、ニヤニヤ笑いかける。

恋人同士? 何故そう思うのだろう?
食物を無駄にするとゴミが増える。故に地球環境の悪化を阻止しようとしただけなのに……。

コーヒーカップに口を付けながら小鳥が思考を飛ばしていると、光一郎がフッと王子の笑みを零し答える。

「気を使わないで下さい。まだ恋人同士まで行き着いていないから」
「やだ、もしかしたらワンナイト!」
「残念だけど、それもまだだよ。キスも遮られたし」
「なのに裸の付き合いねぇ。いいわぁ、萌えるわ」

ベリ子は頬を押えキャッキャッと身をくねらせていたが、いきなり「ところで」と真面目な顔で身を乗り出す。

「私に御曹司のお友達とか、富豪の親戚とか、ご紹介頂けません?」