その日は委員会と日直があって、3人は先に帰った。
「よーし。頑張ろ...」
日誌の一日感想という部分に何を書こうか悩んでた時、前の生徒の書き込みを読んでいたら...
「冬馬だ。」
なんだか面白そうで読んでみた。
“今日はとにかく寒かった。いつもの4人でふざけて笑いあったらなんだか暖かくなって、友達っていいな...なんちゃって。”
私は読み終わって温かい気持ちになった。
『友達...私にも大切で壊したくない友達。壊れて欲しくない関係。』
温かい気持ちと複雑な気持ちがぶつかって胸が苦しくなった。
「ずっと一緒にいたい。でも...友達とは違う...」
頭が痛くなってきて、考えるのをやめて日誌を書いた。
[夏鈴。それ、恋だよ!]
ふと浮かんでくる言葉に一本の線が出来た。
『私、4人って言う友達の関係を壊したくない気持ちだけじゃなくて、冬馬との気持ちをおし殺さなきゃいけないと思ってたんだ。』
日誌を持って教室を出て、学校から冬馬の家に走った。
“ピーンポーン”
「ハァハァ。」
「はい?...って夏鈴?」
慌てて冬馬が家から出てきた。
「どうしたんだよ。何があった?」
「私……この関係...壊したくない!」
「えっ?...」
冬馬は嫌な予感がして...
「どういうことだよ?」
「4人で笑い合う当たり前みたいな関係をこれからもずっと壊したくない。でも……」
「……」
「それなのに……冬馬が誰かに告白するのかなとか...考えたら胸が苦しくなった…」
私は一言一言伝えるのがすごく怖かった。でも、冬馬はしっかり聞いてくれてて。
「私、まだ自分の気持ちがどうとか…よくわからないけど...冬馬のそばにずっと居たい…」
私がそう言った時...
「……っ。」
冬馬が私を抱き寄せた。
「……っ!…………と...う...ま...?」
「俺、ふられると思ってた…。」
「えっ?...」
私が見上げると、頬も耳も真っ赤だった。
「……」
そんな冬馬を見て、思わず笑ってしまった。
「ふふっ。」
「なんだよ。」
「...よかった。」
「何が?」
「気持ち伝えて壊れちゃったらどうしようって思ってたから。」
「……俺は納得いかないけど...」
「どういうこと?」
「俺は、明日言おうと思ってた。」
その言葉で胸が高鳴った。
「なんて言おうとしてたの?」
わざと聞いてみた。
『きっと。うるせぇとか言うんだろうなぁ』
そう思っていたけど……
「好きだ。ずっと前から夏鈴の笑顔をずっとそばで見てたい。これからも。」
「えっ...」
一気に全身が熱くなった。
「なんだよ。お前が聞いたくせに...」
そう言って、冬馬もまた赤くなった顔を隠した。
「私も...。」
もう1度ぎゅっと冬馬にくっついた。
「ちょっ...おま……っ。」
「えへへ...ねぇ。」
「ん?」
「手紙見してよ。」
「いやだ。」
「えー。」
頬膨らましてそっぽを向くと...
「ふっ。言葉で伝えた方が良かったっての、今わかったから、あれはもういらねぇな。」
「そうなの?一生懸命考えたんじゃないの?」
「まぁ。好きなやつに渡すんだからな。」
「ふふん…♪」
「なんだよ(笑)」
「ありがとうっ!」
そう言って、ぎゅっと抱きついて見上げる夏鈴を見て
『こいつにはこの先ずっと敵わない』
俺はそう思った。