友達以上恋人未満

「...どうぞ。」

一ノ瀬君はきょとんとした顔をしてから「マネージャーになってくれたの?」と言った。

「もしかして、さっき俺に見とれてたのバレちゃったの?」

図星だ。こっちもバレてた。

「まぁ...そんなところです。」

すると、一ノ瀬君はにっこりわらって

「保冷剤返しに来たっていって誤魔化せばよかったのに」

あっ。そういえばその手が...。

「ほーんとに、アサヒナさんて素直だねー。」

この状況では、褒められているのか貶されているのか、わからない。

「それ、褒めてるんですか?」

「褒めまくりっすよー」

一ノ瀬君はそういうとスポーツドリンクを一気に飲み干した。

「じゃあ、ありがとねマネージャーさん」

「は...はい」

なんだか、照れくさい。正式にまだ決まっていないけど。

「なんだー?一ノ瀬彼女かー?」

低い声の持ち主は、さっき仕切っていた人みたい。身長が高い、流石バスケ部。

「あっ。柳生センパイ彼女は今日からマネージャーのアサヒナさんッス」

先輩に対してそのしゃべり方はないだろ...。

「おっ!女の子かぁー!しかも、日本人じゃないみたいだなー」


────あぁ、まただ。

母がロシアの人で、その血を受け継いだ私は、容姿がそっちの方だ。
昔から、よくそれが原因でからかわれた。

「おぉ!すっげえ金髪碧眼とか、初めて見たー!」

「えっ。どこ血入ってんのー?」

────怖い。

肩に、手が触れた。

自然と...心が落ち着いた。

「一ノ瀬君...。」

「センパイ立ち待ってくださいよ。彼女マネージャーって言っけど...俺の彼女でもありますからねー?」

(えっ。)

みんな、ざわざわし出した。

(そうだよ、この反応が普通だよ...。)

「なんだよー。水くせぇなー静、早く言えよー!」

「良かったじゃねぇーか静!」


えっ。悪い人じゃないみたい...


(なんだか、一ノ瀬君にいつも助けられてる気がするな。)

いつまでも助けられちゃダメだよ、自分からも変わらないと...。


「朝比奈 アリアと申します!きょっ...今日からよろしくおねがいします!」

自分の声が体育館に響いた。久しぶりに語尾を伸ばさなくても声が大きく聞こえた。

「よろしくなー!」

「よろしく!マネージャーさん!」

その言葉が、簡単な言葉が妙に嬉しかった。

(こんな感情初めてだ。)


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「さっきは、どうも...。一言余計でしたけど...。」

「助けたし、事実だしいいじゃん別にー」

イタズラっぽく、一ノ瀬君はにんまり笑ってこっちを向く。

「でも!あんな所で...」

「所でー?」

なんだか、心を読まれているみたいでいやだ。

「...もう。いいです...。」

「...かわいっ。」

かわいい...。親以外から初めて言われた気がする...。

「そんなことないです!」

「そんなことありますー。

「からかってるんですか?」

「ちょっ。アリアちゃん怒んないでよー」

────アリアちゃん...

なんだか、新鮮だった。
ぎこちない〃アサヒナさん〃より〃アリアちゃん〃の方が何故か

────嬉しかった。

胸がきゅっとする。なんだろ、これ。

「?...どしたの?」

「いえ、何でもないです...」

一ノ瀬君のようににんまりと笑い返してみせると、一ノ瀬君は黙って歩き出した。


「────アリアちゃん...ずるいよ。」

消えそうな、小さく甘い声で一ノ瀬君は呟いた。

「ん?なんですか?」

「うんん。なんでもねぇよ...。」


綺麗な夕焼けが2人の赤くなった頬を隠す
ように真っ赤な色にそまっていく。