俺は思わずガタッとパイプ椅子から立ち上がった。
同じ持ち場にいた、音楽教師の野口先生が〝九条君どうしたの?〟と声を掛けてくる。
競技中だ。今、あそこには突入出来ない。
力無くパイプ椅子へと腰を下ろすと、野口先生に〝何でもありません〟と微笑む。
まだ20代後半にも行かない、若く綺麗な野口先生は俺の微笑みに、嬉しそうに返してくる。
でも、今の俺には名取川サン以外の誰からも意識がそれることはなかった。
怪我人多数の玉入れは、白組が勝利を収めた。終わりの合図がなる頃には、頭を抑えて周りに笑顔を見せる名取川サンが目に写った。
無理はしてないだろうか。
そんな不安が脳裏を過ぎり、退場の合図と共に俺は持ち場から離れ入場門へと向かった。

