「あ〜あ、今日も逃げられちゃった 」
「お前何やってんだよ 」
「なんか、好きになっちゃったんだよねェ」
走って去っていく2人の後ろ姿を見て言う昌が、物凄く恋してるなぁって顔をしていて新鮮だった。
「昌がそんな真剣なの珍しいな、新鮮だわ」
「はぁ〜?うっせェな!猛だって珍しく女の子と話してたじゃーん?ピアノの彼女はいいの? 」
何処か照れたような様子の昌は、それを隠すように俺に話題を振る。
「なんか、雰囲気が似てる気がしたんだよね 。名取川サンとピアノの子 」
「もしかして、ピアノの彼女桜子ちゃんだったりして〜? 聞いてあげよっか? 」
「余計な事すんなって言っただろ、アホ 」
俺はむすっと昌を軽く睨めば、さっきの照れていたお前はどこに行ったんだ、と言いたくなるほどおちゃらけた悪い笑顔をする昌。
その顔が憎たらしく、べーっと舌を出して悪態をついた。
てかなんでお前が名取川サンの事、名前で呼んでんだよ。
少し、気持ちがモヤっとした。
きっとピアノの子と似ているから、意識しているだけだ。一時的なものだ。
そんな馬鹿みたいなやり取りをしながら、教室への帰り道を歩いて行った。

