次々と課題曲を弾きこなしていく人達。
課題曲だからといって全てが同じというわけじゃなくそれぞれの表現が違ったり、醸し出すオーラも違う。
ヴァイオリンとピアノの音が合わさって、綺麗に聞こえるのは、素人の私でもよくわかる。
『素敵……』
私はポツリと呟いて頬を緩ませる。
すると隣の席に座る、綺麗な女の人に話し掛けられた。
「貴女もわかる? この綺麗な音色」
『はいっ、とても素敵な音色です』
何処か柔らかい印象で、軽く巻いてある茶髪の髪の毛はサイドに纏められていて、何処か猛先輩を思わせる女性であった。
「貴女の目も綺麗な目をしてるわ。貴女も音楽してみない……? 」
『……私なんて、全く楽器触った事ないですよ? 』
「じゃあ、このコンクールが終わってから1番素敵だったっていう演奏を教えて。それの素敵だったって思う演奏が私と被ったら、貴女も音楽やりましょう? 」
パチンと彼女はウィンクすると、ちょうど10番の演奏が終わっていて拍手が響く間に彼女は名刺だけ置いて立ち去ってしまった。
とても綺麗な人で、不思議な人。
あの人のお陰で緊張が解れて、つぎが九条サンの番だと言うのに、妙に落ち着いていた。

