俺はにこっと先生に笑いかければ、ピアノへ向き直り鍵盤に手を置いて先生の方へと視線をやった。
「九条くんは秘密主義なのねっ」
ヴァイオリンを肩にかけ、またふふっと笑う先生。俺はその先生の言葉を無視して、先生が頷いたのを確認すれば、ピアノの音を奏でた。
「やっぱり九条君に頼んでよかったわぁ。完璧に弾きこなしてくれるんだもん」
何回か課題曲を弾き、休憩しようとなりピアノの椅子に座りながら牛乳を飲んでいると、先生から声が掛かった。
『完璧だなんて、何回かミスタッチだってしてますよ。俺』
「ふふ、でもそれに気づかれないぐらいの演奏してくれるじゃない。嬉しいわァ私の為に」
何だかわざとらしく〝私の為に〟という言葉が強調されたのは気のせいであろうか。

