もうこんな時間…
時計はもう22時、あと少しでクリスマスが終わる。
大学生活ではじめてしたコンビニのバイトは、
クリスマス中、ケーキやチキンの販売などで追われる上に
彼氏もちの人は、シフトを入れたがらない…
結果、彼なしの私がでることに。
寒空の下、サンタ帽子をかぶりセールになったケーキを売り切った。

「じゃあ上がります、お疲れ様でしたー」

カイロがわりに好きなホットミルクティーを買って帰ろう。
サンタ帽子を鞄にしまい、マフラーをつけスタッフルームを出た。
明るいコンビニから薄暗い道を家路につく。
とたんに寂しさがこみ上げてきた。
空からは冷たい雪が降りだしていた。
ケーキを買ってくれた人たちは、家族や恋人、大切な人と、楽しい夜を過ごしたかな…そう思うと、すこしは救われた気がした。
大切なひとかぁ…
ミルクティーで手を暖めながら涼介の笑顔が浮かんだ。
同じゼミの涼介。カッコいいというより綺麗なその姿に、私は一目惚れしていた。
イケメンなんかきっと女の子選びたい放題、性格に難ありだろうな、と勝手に決めつけて 、
心の中で諦めようと
自分に言い聞かせていた。
でも、同じ課題のチームになって深夜までみんなで議論した時、最初はシャイな涼介が以外で驚いたけど、
打ち解けて話せたときは、本当に嬉しかったな。

友達っていってくれて。

それからも、
『はい、ミルクティー。お前すきだろ。 』
って差し入れしてくれたり、
私が発表の時緊張でうまく話せなくなったのを見て、自然にフォローしてくれたよね。
気にすんな、って。
本当は真面目で優しい一面に気づいてしまった。

ふとそんなことを思いだしていた。
一人暮らしの部屋の玄関をあけソファーに荷物をおくと時計はもう23時半。
部屋でマフラーをはずしていると携帯の着信音がなった。
涼介からだ。
あわてて携帯をとる。

「もしもし…?」

『俺、涼介。いま、なにしてるの…?』

「コンビニのバイトがやっと終わってさ、かえりついたところ。
今年もぼっちのクリスマスだったよ、なーに?講義のノートでもまた貸して、の電話?」

『あのさ、いままで勇気でなくてさ、俺ふがいないよな。』

「どうしたの…?どうかした?」

『あと30分あるからダッシュでそっちいってもいい?』

「うん…いいけど、夜だし寒いし大丈夫?マフラーとかつけて…」

と話を終える前に電話がきれた。
ダッシュ、ってなに?子供みたい。と一人可笑しくなりながら鞄のサンタ帽子をとりだし眺めていると、
ピンポーンとインターホンが鳴る。
ガチャ、とドアを開けるとそこには息を切らせた涼介が立っていた。

「頭に雪ついてるよー、大丈夫?」


わたしが手でポンポンはらっていると、腕をつかまれた。

「なに、今日変だよ涼介、ふがいないとか。」

驚いてると、涼介が手を離し、ポケットから小さい白い袋をだした。

『あのさ、ふられるかもって勇気でなくて、こんな時間になっちゃったけどまだ間に合うかな…?』

『俺、お前のこと…好きなんだ。
どうしても、今日伝えたかった。
友達じゃなくて、彼氏になりたい。
俺と、付き合ってください。』

真剣な眼差しで私を見る。

「私…私も涼介と同じ気持ちだよ、ずーっと好きだった。
よろしくお願いします。」

そう言うと、真剣な涼介の表情がとたんに和らいでいった。
小さな袋からは、かわいいクロスのネックレス。

『これ…つけてもいいかな…?』

不器用に、でも優しくつけてくれた。

ふとサンタ帽子に目がいった。

私は彼にその帽子を被せて言った。

「ありがとう、涼介が
サンタクロースだね。
来年のクリスマスは、
ずっと一緒にいようね。」