ベランダに出て、お母さんを見送るみたいに、私は一之瀬君に手を振った。

一之瀬君は軽く手を挙げて、さっと車に乗り込む。


ブルルル・・

ハイヤーは音を立てて走り去った。

残った私は、ガランと静まり返った部屋を見渡す。

一之瀬君がいないだけで

こんなにもこの部屋は広いんだ。

一之瀬君がいただけで

この部屋はあんなにも暖かかった。

私の中で
一之瀬君の存在が
どんどんと大きくなっていく。