ガラっ

保健室には誰もいなかった。


独特の、消毒の匂いが

ツン、と鼻につく。


真っ白の何も無いベッド。

カーテンをあけて、


そこにすわる。


「あぁー……」

声を漏らせば、

布が吸収して、

しずかな空気に消えていく。


疲れていた私はベッドにズブズブと沈んでいった。


ガララ…………


遠慮がち、保健室のドアがあく。

開けっぱなしのカーテンからは華奢なおんなのこ。


ん、

「ユノ……」

ユノがトタトタとあるいてくる。


「だ、大丈夫だった……?」

ユノは心配気にこっちをみて、

隣にベッドにすわる。


ギシ、


「うん、大丈夫!ありがとう」

笑って見せても、

ぶんぶん、とユノは小さく首をふる。


「あは、もう、ユノ……、」

ユノはちっちゃくて、可愛くて、守りたくなる。


「さっき、アイツ(数学のせんせい)に、太もも触られてさ、きもかったんだよー、でも、橘先生がたすけてくれた」

みじかくそう説明すると、

それだけでよかったのか、

ホッ、とした、顔をうかべる。


「そっか……ごめんね。」

ツヤツヤの、ボブのユノの頭をなでる。

「んーん!ありがと!」



橘先生にすこしだけときめいてしまったことは、

またこんど話そう。