中野くんとバイバイをしたあと、

教室にもどった。


たぶん、中野くんと付き合うことは、ないんだと、おもう……。


橘先生が好き、っていうのもあるけど、

きっと、中野くんはこんな私に飽き飽きしてしまうだろう。


でも、嬉しかった。


いままでの顔目当ての男子とは違って、


まっすぐ、私を見ていてくれる。



そう思うと、小さく笑いがこぼれた。





昼休み、机でごろごろしてたら。


「結城!」


……っ。


大好きな人の声が、聞こえた。


「……は、はい。」


私は震える声で静かに顔を上げる。



好き、と気づいてから、始めて合うんだもんなぁ。


どく、どく、どく。


鼓動は速さを増して、私の体は熱くなった。


「寝てるとこ悪いな…、ちょっと仕事、手伝ってくれ。」


橘先生は私の顔を見てそう言った。


辺りを見回すと、

静かに読書や勉強をしている人しかいなくて。


たぶん、私しか頼れる人がいなかったんだろうな、

そう感じながら、

橘先生のところへ行く。



んー。

なんか気まづい。


この前、ギュッてされたもんな。



「あの……?」


「え、えっと!…ここのプリントを配ってくれないか?」


橘先生も慌てた様子で答えた。


気まづい。


ほんとに。


私は先生からプリントを受け取ると、

名前を確認して、それぞれのところへ配った。


全てのプリントがなくなって、

先生のところへ戻る。

「先生、終わったよ」


そう言うと、橘先生は、


「ありがとうな、」

と、はにかむような笑顔をみせてくれた。


どき、。


この笑顔、反則なんだってば……。


私はそう思いながら、


フラフラと自分の席にもどった。