堤医師が俺のほうを見ながらそう尋ねてきた。


俺はこの時ほど咲雪と血が繋がっていないことを悔しく感じたことはない。

俺が答えるより前に、母が言った。



「咲雪は……私達の実の娘ではなく養女なんです」



堤医師がはっとした表情を浮かべる。

彼が全く予期していなかった答えに違いない。



「そう……ですか。しかし、咲雪さんの場合、今すぐ骨髄移植が必要というほど状況が切羽詰っているわけではありません。
時間の猶予がある今のうちから全国骨髄バンクを通して咲雪さんの適合型を捜すことにしましょう」


「是非、お願いします。先生、あの子に最善の治療を施してやってください」


父がそう言うと、堤医師はしっかりと頷いた。



「そのことは約束します」


椅子から立ち上がった堤医師を、「先生‼」と思わず呼び止めてしまった。

堤医師が俺の方を振り向く。



「俺の骨髄が、咲雪と不適合と決まったわけではないですよね?」