「断言は出来ません。この方法でフィラデルフィア染色体が消失して完治した例もあるにはありますが稀な例です。

インターフェロン治療の目的は、一般的に将来必ず起こる急性転化を先延ばしにすることと御理解ください。

急性転化を未然に防ぎ完治するための方法は現在のところ造血幹細胞移植いわゆる骨髄移植だけなのです」



今度は母が口を開いた。


「骨髄移植というのは、具体的にはどんな治療なんでしょう?」


「骨髄移植というのは……そもそも血液は骨髄から作られますが、その骨髄が正しく機能しないと正常な血液も作られません。

それで、その正しく機能していない骨髄を放射線で破壊して、健康な骨髄の持ち主から採取した骨髄液をそこに植え付ける、すなわち移植することによって正常な血液を作り出せるようにするというものです。

ただ、提供者は健康な骨髄の持ち主なら誰でもいいという訳ではなく、患者と同じタイプの骨髄の持ち主に限られます。

その同じタイプの骨髄の持ち主ですが、兄弟では4人に1人の確率で適合型が見つかりますが、それ以外では数万人に1人いるかいないかというぐらいまで確率が低くなります。

ですから、この中で咲雪さんに骨髄を提供できる可能性が一番高いのはお兄さんということになります。骨髄の適合試験そのものはすぐにできますが、調べてみますか?」