央子は俺と並んで走りながら言った。
「間に合わないわよ。あたしの自転車使う?駅に置いておいてくれたらいいから」
「マジで?」
「あたしは別に急がないからね」
そう答えて央子がブレーキをかけて止まる。
彼女は前かごから自分の鞄だけ取り出して自転車を貸してくれた。
「ありがとう。助かった」
「いいって。さ、早く」
央子がにっこりと笑う。
あ、央子ってけっこういい奴なんだ。と、その瞬間思った。
俺と央子は席が隣でたまに話したりはするが。
クラスの中でも他の女子達ともあまり群れたがらないちょっと浮いた存在だった央子に対して、先入観から彼女はクールでドライだと決めつけていた。
でも、本当は思っていた以上に積極的に親切なタイプらしい。