ふいに、あたしの耳に微かなメロディが聞こえてきたような気がして。
気のせいかと思って耳を澄ませてみると、やっぱり聞こえる。
それは、壁の向こうから聞こえてくるようだ。
ああ、お兄ちゃんがピアノを弾いてるんだ。
そう思った瞬間、それまで感じていた恐怖が薄らぐような気がして。
お兄ちゃんがあたしを支えてくれているような気がした。
もう一度目を閉じる。
大丈夫。
お兄ちゃんがいてくれるから、ちゃんと明日も目覚めることができるに違いない。
それに、明日の晩には悠聖にも会える。その事を楽しみに今は眠ろう。
お兄ちゃんは弾いている曲のサビの部分を何度も何度も繰り返す。
お兄ちゃんは何を考えながら弾いているんだろう。
すべてはあるがままに……。
悩んでも解決しないのなら、ありのままを受け入れるしかないよね。


