咲雪が治療を受けているICUのすぐ横の家族控え室のベンチで、俺は両手の平を組んで頭を垂れ、咲雪の為に祈り続けていた。


苦しい時だけの神頼みを神が聴いてくれるのかはわからない。

でも、それでも俺は祈らずにはいられなかった。


俺は名前すら知らない神にひたすら祈り続ける。




お願いです、神様。

咲雪が元気になれるなら、この命を差し出しても全然惜しくはありません。


どうか咲雪を助けてください。




咲雪を助けることが出来るなら、神でも仏でも悪魔でもいい。


俺は、わらにでもすがりつきたいような心境だった。





ばたばたと足音が反響しながら近づいてくる。
そして、それと重なって圭祐の声が聞こえてきた。



「悠聖ぇー‼」

 
顔を上げると、必死の形相の圭祐と央子と茉優ちゃんが駆けて来るのが目に入る。


良かった。

この雪で電車が止まるんじゃないかって心配したけど、間に合ったみたいだ。