父にはすごく親しい友人がいた。
小学校から大学までずっと一緒で、どんなことでも話し合える仲だったらしい。
……だったらしいというのは、もうその友人はいないからだ。
俺が父からその話を聞いたのはずいぶん昔のことだし、ちゃんと覚えているわけでもないが。
ちょうど俺が一歳ぐらいのときに、この町に何かの伝染病が蔓延したそうだ。
その病気は、通常は三日ほど高熱が続いた後治まる、決して恐ろしい病気ではなかったらしい。
だけど、父の友人は生まれつき虚弱な体質の持ち主だったらしく、三日ほどで治まるはずの高熱がいつまでも下がらず、結局、肺炎を併発させて亡くなったそうだ。
そして、その奥さんはその時子供が産まれたばかりで病院に入院していた。
奥さんは妊娠と同時に発覚した乳ガンの進行が進んでいたせいで、出産はできたけれど母体は耐えきれなかったために数日後、夫の後を追うように亡くなったそうだ。
乳ガンが発覚してから、妊娠を継続するかそれとも治療に専念するか。
究極の選択を迫られた二人は「家族“3人”で闘い抜く」と決めて、治療しながら生まれてくる赤ちゃんを楽しみにしていたんだ、と父が教えてくれた。
その後、いきなり両親を亡くした孤児の赤ん坊を誰が引き取るかでずいぶん揉めたらしい。


