白血病の治療には、かなりの経済的な負担が強いられる。


だから、父と母は仕事を休むどころか今まで以上に忙しく働いているので、なかなか咲雪の見舞いに来ることが出来ない。



二人とも時間が許す限り病院に来ようとしているのだが、やはり毎日というわけにはいかない。

それに、来てもあまり長い時間一緒にいることは出来ない。

 

そんなわけで、ずっと咲雪に付いていられない両親の代わりに、2月中は休みの俺と悠聖と央子が昼間はそばにいて、夜は交代で咲雪に付き添うことにしている。





 
その日、母は絵の具まみれの姿で夕方ぐらいに病院に来た。

そして、ビニール越しに一時間ぐらい咲雪と話をしている。


母の気持ちからしたら、こんなビニール越しなんかじゃなくて、直接咲雪の世話をしたいんだろう。


そして、時間が許すならずっとそばにいてやりたいんだろう。



普段より口数の多い母の姿を、俺はいたたまれない気持ちで見ていた。