この件は咲雪にはタブーなんだ。


まったく、なんで俺はこう言わなくていいことばかりついつい口走ってしまうんだろう。



「ごめん。傷つけたんだったら本当にごめん!」



慌てて謝ると、咲雪は口をへの字に曲げてふんっとそっぽを向いてしまった。



「咲雪、お前がさ元気になってどこかに行く時は……」


「…………」



咲雪がそっぽを向いたまま、目だけこっちを見る。



「咲雪が、どこか遠くに行く時は、俺も一緒に連れてってくれる?」

 

それを聞いて、咲雪はまだそっぽを向いたまま、やっと聞こえるぐらいの小さな声で囁いた。



「悠聖と一緒じゃないとやだ」


「え?よく聞こえなかった」


わざと聞き返すと、咲雪は少し大きい声で言い直す。



「悠聖と一緒じゃないとやだ」


「もう一回」


嵌められたことに気付く咲雪。



「もう!聞こえてるくせにわざと言ってるんでしょ!?」