あたしは朦朧とした意識の中で悠聖のことを思っていた。


瞼を閉じるとすぐに浮かんでくる彼は、あたしがあんなに酷いことをしたにも関わらず、いつも優しい笑顔をあたしに向けてくれる。



そんな彼の笑顔がなかったら、二日間の地獄のような抗癌剤の点滴を耐えられたかどうかわからない。


抗癌剤の投与が終わったからといってすぐに体が楽になるわけではない。


体にはまだまだ抗癌剤が残っているわけだから、体を自分の意思で動かすことすら出来ない。



実のところ、この二日間ずっと意識は濁ったままで、今でさえ自分の意識が現実のものなのか、夢なのかすらわからない。

夢と現実の境がぼやけて曖昧になっている。


眠りが浅いので見た夢は全部鮮明に覚えている。


夢の内容はばらばらだけど、その全てに悠聖が出てきた。