その時俺は、悠聖の手に血が滲んでいることに気がついた。


ずっと拳を強く握り締めていたせいで、爪が手の平を傷つけたんだ。



悠聖がそこまで咲雪のことを想ってくれていることが、俺はとても嬉しかった。



悠聖は、他人の痛みを自分自身の痛みのように感じることが出来る優しい心の持ち主だ。

その不器用な優しさに咲雪も惹かれたんだろう。



俺は咲雪の為に涙を流し続ける悠聖の姿を見て、悠聖が咲雪の恋人で本当に良かったと思った。



「悠聖、咲雪にはお前のその気持ちをなによりも嬉しいと思うよ」


「…………」


無言で顔を上げる悠聖に、俺は心から言った。



「ありがとう」



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