「……咲雪は、明日の夜まで昼も夜も関係なく抗癌剤の点滴が続く。それがどれだけ苦しいか、あいつのあの声を聞けばわかる。

……なあ、悠聖。咲雪は自分が苦しんでいる様子を知られたくないんだよ。あいつのそういう気持ちを尊重して、今はそっとしとこう」


圭祐の言いたいことはわかるけど……。



「な。悠聖?」


「……わかったよ」


何とか搾り出すように答えて、俺は後ろ髪を引かれる思いで咲雪の病室を後にした。



途中、ナースステーションの前を通りかかった時。

突然アラームが鳴り響き何かと思って振り向くと、看護師の一人が慌てて飛び出して行くのが見えた。


彼女は咲雪の病室に駆け込んでゆく。



「咲雪が‼」


思わず駆け出しそうになった俺の腕を圭祐が掴んで引き止める。


「止めるなよ‼」


「心配するな。ナースコールだよ。大丈夫、看護師さんがちゃんとやってくれるから」


圭祐が泣きそうな声で懇願するように俺を止めようとする。