病院の7階にある咲雪の病室の前まで行ったが、分厚い金属の扉には面会謝絶と記されたプレートがぶら下がっていた。


耳を澄ましてみると、中からは苦しげな呻き声が漏れてくる。



咲雪……。

俺は自分の拳を強く握り締めた。


皮が破れ爪が肉に食い込んだが、咲雪の苦しみに比べればどうってことはない。



ほんの数メートルしか離れていないのに、すぐ傍にいるのに、彼女の為に何もすることが出来ない。

傍に行って手を握ってやることすら出来ない。



「悠聖」


肩にぽんと手が置かれる。

振り返ると、圭祐が何か言いたげな表情をしていた。


「なんだよ?」


圭祐はゆっくりと首を横に振る。



「悠聖の気持ちはわかるつもりだ。
……咲雪のそばにいたいって気持ちもわかるけど、これは咲雪自身の戦いだから、俺達には残念だけど何の助けにもなれない」


「わかってるよ‼」


わかってるけど、それでも何もしてやれないことがもどかしくて、少しでも彼女のそばにいたいんだ。