クラスの全員の目がこっちに集中する。
悠聖がつついてきた。



「なんだよ圭祐、やばいことでもしたのか?」


「違うよ。たぶん、家から電話があったんだろ」
 

用意していた嘘だ。



「なんて?」


「いや、ちょっとじいちゃんの容態が悪くてさ。朝、家を出る前から電話するかもしれないってなことを親が言ってたんだ」


嘘の羅列。

俺は平気な顔で親友に嘘をつける自分を嫌悪した。



「そうか、大変だな。この後の授業のノートはまた貸してやるから心配するなよ」


「ああ。サンキュ」


今の俺には、悠聖の二心のない優しさが痛い。


俺は、鞄を持って逃げるように教室を出た。



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